「奨学金は低金利だから安心」

「教育ローンより安いから、とりあえず借りておこう」

もし、あなたがまだそう思っているなら、その認識は今日で捨ててください。

令和7年(2025年)11月、日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金の利率が、ついに危険水域に突入しました。

  • 利率固定方式:2.0%超え
  • 利率見直し方式:1.3%

これは、かつての「ほぼ無利息(0.1%以下)」時代とは別次元の数字です。

この記事では、最新の金利データを基に、これから大学へ行くお子さんを持つ親御さんが絶対に知っておくべき「返済額のリアルな増加」と「金利決定の仕組み」について、FPがどこよりも詳しく解説します。


1. 【衝撃のデータ】令和7年11月、奨学金は「借金」として牙を剥いた

まずは、ご提示いただいた令和7年11月の確定データを直視しましょう。日本学生支援機構の第二種奨学金(有利子)の利率は、市場金利の上昇に伴い、急激に上がっています。

過去との比較で見る「異常事態」

これまで(平成後半〜令和初期)は、超低金利政策のおかげで、奨学金の利息は「あってないようなもの」でした。しかし、現在は違います。

時期利率固定方式(固定)利率見直し方式(変動)状況
数年前(令和2年頃)0.1% 〜 0.2%0.002% 〜 0.01%ほぼ無利息
令和7年11月2.0% 超1.3%本格的なローン金利

固定方式で2%を超えるというのは、もはや「低金利の国の教育支援」というより、「民間の住宅ローン(変動金利)よりも高い金利」でお金を借りているのと同じ状態です。


2. 「2%」で返済額はどう変わる? 恐怖のシミュレーション

「2%」と言われてもピンとこないかもしれません。そこで、具体的な金額で比較してみましょう。

【条件】

  • 借入総額:400万円(月10万円 × 4年間など)
  • 返済期間:20年(240回払い)
  • ※元利均等返済で試算

① かつての「0.1%」の場合(数年前の卒業生)

  • 毎月の返済額:16,835円
  • 利息総額:約4万円
  • 総返済額:404万円
    • → 「400万借りて、利息は4万で済む」。これなら「借りておこう」も正解でした。

② 今回の「2.0%」の場合(令和7年11月の卒業生)

  • 毎月の返済額:20,235円
  • 利息総額:約85万円
  • 総返済額:485万円
    • 利息だけで85万円! 0.1%の時と比べて、約81万円も負担が増えています。

【FPの視点】

81万円あれば、新生活の家具家電はもちろん、中古車が買えたり、結婚式費用の一部にできたりします。それが「利息」として消えていくのです。

毎月の返済額も約3,400円増えます。手取り20万円の新社会人にとって、この差は生活レベルを直撃します。


3. 最大の罠!金利が決まるのは「入学時」ではなく「卒業時」

ここが最も重要、かつ多くの人が誤解しているポイントです。

奨学金の金利は、「貸与期間終了月(通常は大学卒業時)」に決まります。

つまり、今(入学時)の金利を見て「高い・安い」を判断しても意味がないのです。

「後出しじゃんけん」の仕組み

例えば、2026年4月に入学するお子さんの場合:

  1. 入学(2026年):世の中の金利は上昇傾向。でも、自分に適用される金利はまだ「未定」。
  2. 在学中(4年間):ひたすら借り続ける。金利がどうなるかは神のみぞ知る。
  3. 卒業(2030年3月)この瞬間の市場金利で、あなたの利率が確定。

もし、2030年にインフレが進み、市場金利がさらに上がっていれば、「固定3.0%」なんて数字を突きつけられる可能性もゼロではありません。

逆に下がっている可能性もありますが、現状の経済動向(金利ある世界への回帰)を考えると、楽観視はできません。

「利率がいくらになるか分からない借金を、400万円契約する」。

これが第二種奨学金の本質なのです。


4. 究極の選択。「固定方式」か「見直し方式」か?

奨学金を借りる際(厳密には貸与終了時)に、2つの金利タイプからどちらかを選びます。令和7年11月のデータを例に、それぞれの特徴とリスクを整理します。

A. 利率固定方式(2%超)

  • 仕組み:卒業時に決まった金利が、完済までの20年間ずっと変わらない。
  • メリット:返済計画が立てやすい。今後どれだけ世の中の金利が上がっても、2%から上がらない。
  • デメリット:スタートが高い。すでに2%を超えており、利息負担が重い。
  • 現状の判断:「これ以上金利が上がったら破綻する」というリスクを回避するための「保険料込みの金利」と考えるべきです。

B. 利率見直し方式(1.3%)

  • 仕組み:卒業時に決まるが、5年ごとに利率が見直される(変動する)
  • メリット:固定方式よりスタートの金利が低い(今は0.7%以上の差がある)。
  • デメリット:将来、市場金利が急騰すれば、5年後の見直しで利率が跳ね上がるリスクがある(ただし、変動幅には一定の上限がある場合も)。
  • 現状の判断:目先の負担は軽いですが、20年という長い期間で見た時、どこかで固定金利を追い抜く可能性があります。

【FPのアドバイス】

一般的に、金利上昇局面では「固定」がセオリーですが、ここまで差(0.7%以上)が開くと悩みます。

  • 「絶対に将来のリスクを取りたくない、安心を買いたい」なら固定
  • 「今は少しでも安く抑えて、金利が上がったら繰り上げ返済で逃げ切る覚悟がある」なら見直し。という考え方が現実的でしょう。

5. 親ができる防衛策!「借りない・減らす・早く返す」

「じゃあどうすればいいの?」という親御さんへ。金利上昇時代の奨学金戦略は以下の3つです。

① 給付型・第一種(無利息)への執念を持つ

まずは「利息のないお金」を確保することに全力を注いでください。

  • 高等教育の修学支援新制度(給付型):世帯年収や資産要件を確認。
  • 第一種奨学金(無利息):高校の成績基準(評定平均3.5以上など)がありますが、家計急変採用などもあります。
  • 大学独自の奨学金:成績優秀者への免除制度など、パンフレットを隅々までチェック。

② 「とりあえず満額借りる」をやめる

昔の親御さんは「利息安いし、満額(月12万など)借りて、余ったら貯金しておけば?」と言いがちでした。

しかし、金利2%時代にこれをやるのは「高い金利で借金して貯金する(=損をする)」行為です。

必要な分だけ借りる、あるいはアルバイトで少し賄って借入額を減らす努力が、将来の数百万円の差になります。

③ 「繰り上げ返済(スカラネット・パーソナル)」を前提にする

もし第二種を借りざるを得ない場合でも、対抗策はあります。

それは「余裕ができたら一括で返す」こと。

奨学金は、繰り上げ返済した期間の利息は一切かかりません。

子どもが社会人になり、ボーナスが出たり、親御さんに余裕ができたりしたタイミングで「元金」をガツンと返済すれば、予定されていた利息(数十万円)を払わずに済みます。

「借りる時は変動(見直し方式)にしておき、金利が上がりそうになったら必死で繰り上げ返済して逃げる」

これが、金融リテラシーの高い層がとる戦略の一つです。


まとめ:奨学金は「金融商品」であることを認識しよう

令和7年11月の「固定2%超、見直し1.3%」という数字は、奨学金がもはや「教育的な支援」の枠を超え、「金融市場の論理で動くローン」になったことを示しています。

  • 昔の感覚で借りない。
  • 金利は卒業時に決まるリスクを知っておく。
  • 利息総額が80万を超える可能性を直視する。

これから大学を目指すご家庭は、この厳しい現実を踏まえた上で、進学資金計画(マネープラン)を練り直す必要があります。

「子供に借金を背負わせる」ことの意味が、以前よりもずっと重くなっていることを、ぜひ親子で話し合ってください。