新NISA、「給与口座の銀行」でなんとなく始めていませんか?FPがネット証券を強くすすめる「3つの数字」 ~「相談できる安心感」に支払う対価が高すぎる理由~
はじめに
「今年こそ新NISAを始めよう!」 そう決意したとき、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが、普段給料が振り込まれている**「メインバンクの窓口」**ではないでしょうか。
「よく知っている銀行だし、窓口で丁寧に教えてもらえそう」 「ネット証券は手続きが難しそうで、何かあった時に怖い」
その気持ち、痛いほどよく分かります。誰だってお金のことでは失敗したくありませんし、顔の見える担当者がいた方が安心できる気がします。
しかし、FP(ファイナンシャルプランナー)として、心を鬼にして言います。 その「なんとなくの安心」は、将来的に300万円以上の損につながる可能性があります。
銀行の窓口担当者は、あなたの「親切なアドバイザー」であると同時に、「金融商品を売る販売員」でもあります。彼らもビジネスである以上、利益の出る商品を売らなければなりません。
今回は、なぜFPがこぞって「ネット証券」を推すのか。 その理由を、**感情論ではなく「3つの残酷な数字」**で比較しながら解説します。
1. 圧倒的な格差がある「取扱本数」の数字
まず一つ目の数字は、私たちが選べる商品の「選択肢」の数です。
新NISAで投資できる商品(投資信託)は、世の中に6,000本以上存在します。その中から、どの金融機関を選ぶかによって、買える商品のラインナップが劇的に変わります。
- 大手銀行・地方銀行(窓口): 10本 〜 30本程度
- 主要ネット証券(SBI・楽天など): 2,500本以上(つみたて投資枠だけでも200本以上)
【ここが問題】 「多すぎても選べないから、銀行が厳選してくれている方がいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、問題はその「厳選の基準」です。
銀行のラインナップには、世界中の投資家が選んでいる「超・低コストな優良ファンド」が含まれていないケースが多々あります。なぜなら、そういった商品は銀行にとって儲け(手数料)が少ないからです。
代わりに並んでいるのは、銀行系列の運用会社が作った商品や、銀行側に手数料が多く入る商品である可能性があります。 つまり、銀行の窓口に行った時点で、あなたは**「最高の食材がないレストラン」でメニューを選ばされている**ような状態になりかねないのです。
2. 資産を削り取る「信託報酬(手数料)」の数字
二つ目の数字は、投資をする上で最も重要なコスト、**「信託報酬(しんたくほうしゅう)」**です。
これは、投資信託を持っている間、**毎日・毎年チャリンチャリンと引かれ続ける「管理手数料」**のことです。 新NISAは「利益にかかる税金」はゼロになりますが、この「手数料」はゼロにはなりません。
では、ネット証券と銀行窓口で、売れ筋商品の手数料にどれくらいの差があるのでしょうか。
- ネット証券の主流(インデックスファンド): 年率 0.05% 〜 0.1%
- 銀行窓口の主流(アクティブファンド等): 年率 1.0% 〜 1.5%
【FPの視点】 「たった1%程度の差でしょ?」と思いましたか? 投資の世界において、この「1%」は致命的です。
世界経済の成長によるリターンは、平均して年4%〜5%と言われています。そこから手数料として1.5%も取られてしまえば、利益の3割近くが手数料として消えてしまう計算になります。
プロの投資家たちが0.1%のリターンを求めて必死に分析している中で、「場所が便利だから」という理由だけで確実なマイナス1.5%を背負うのは、あまりに分が悪すぎる賭けです。
3. 20年後に開く「300万円」の格差
では、その「たった1%の手数料差」が、20年という長い時間をかけた時、具体的にいくらの金額差になるのでしょうか。
ここが今回の記事で一番お伝えしたい部分です。実際にシミュレーションしてみましょう。
【試算条件】
- 積立額: 月5万円(年間60万円)
- 期間: 20年間(元本総額 1,200万円)
- 運用リターン: 年率5%(好調な世界経済を想定)から、それぞれの手数料を引く
【A:ネット証券で運用】 (実質利回り 4.9% = リターン5% - 手数料0.1%) 20年後の資産額 = 約 2,037万円
【B:銀行窓口で運用】 (実質利回り 3.5% = リターン5% - 手数料1.5%) 20年後の資産額 = 約 1,717万円
【結論】 その差額は、約 320万円 です。
いかがでしょうか。 同じ5万円を、同じ20年間積み立てたにもかかわらず、「どこで口座を作ったか」だけの違いで、新車が1台買えるほどの差が生まれてしまうのです。
銀行窓口の「相談無料」というサービス。 その対価として、あなたは将来の320万円を支払っているのかもしれません。このコストを認識した上で、それでも「対面の安心感」を選びますか?
「でもネットは怖い・面倒」という人へ
ここまで読んで、「ネット証券の方がいいのは分かった。でも、スマホの操作に自信がないし、パスワードとか忘れそうで怖い」と感じる方もいるでしょう。
しかし、今は状況が変わっています。
- 操作性: 主要なネット証券(SBI証券や楽天証券)の画面は、初心者向けに非常に分かりやすく改善されています。
- 手間: 最初に「口座開設」と「クレジットカードの登録(積立設定)」さえしてしまえば、あとは20年間ほったらかしでOKです。毎月ログインする必要すらありません。
銀行の窓口に行く手間(移動時間、待ち時間、営業の話を聞く時間)を考えれば、自宅で休日に1〜2時間かけてスマホで設定する方が、トータルの時間コストも圧倒的に低く済みます。
分からないことがあれば、今はYouTubeやブログ(当ブログも含め!)で、実際の画面付きの解説がたくさん出てきます。 「対面の担当者」がいなくても、「世界中の情報」があなたの先生になってくれる時代なのです。
まとめ:金融機関選びは「入り口」で決まる
新NISAは、一度口座を作ってしまうと、金融機関を変更するには年単位の手続きが必要になり、非常に面倒です。 だからこそ、最初の「なんとなく」を避けてください。
- 取扱本数の圧倒的な差(数千本 vs 数十本)
- 手数料の残酷な差(0.1% vs 1.5%)
- 20年後の300万円の差
この3つの数字を見て、それでも「窓口の笑顔」に価値を感じるなら、銀行で始めるのも一つの選択でしょう。 しかし、**「自分と家族のお金を効率よく増やしたい」**と願うのであれば、答えはシンプルです。
最初は少し勇気がいるかもしれませんが、ネット証券で口座を開く。 その「ひと手間」が、20年後のあなたに数百万円のプレゼントとして返ってきます。