住宅ローン控除は、「借りていれば毎年しっかり戻ってくる制度」と思われがちです。しかし実際には、控除枠が余っている、思ったより戻らない、制度は使っているが効果が小さい。こうしたケースは珍しくありません。

FPとして断言しますが、住宅ローン控除は「使い切れない人の方が多い制度」です。この記事では、控除を使い切れない人に共通する5つのパターンと、その対策を解説します。住宅ローン減税の仕組みを理解した上で読むと、より理解が深まります。

住宅ローン控除が「余る」とはどういう状態か

まず前提を整理します。住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高をもとに計算された控除額を、所得税と住民税から差し引く制度です。

つまり、控除額があっても、差し引く税金が少なければ使い切ることはできません。これが「控除が余る」という状態です。控除は「税金を減らす制度」であって、「お金をもらえる制度」ではないのです。

共通点1:そもそも納めている税金が少ない

最も多い原因がこれです。年収が低めの人、育休・時短勤務中の人、配偶者控除や扶養控除が多い人は、住宅ローン控除を引く前の所得税・住民税そのものが少なくなります。

例えば、年末のローン残高が3,000万円で控除率0.7%の場合、控除額は21万円です。しかし、所得税が10万円、住民税からの控除上限が9.75万円の場合、使える控除は最大19.75万円。1.25万円分の控除枠が余ってしまいます。

年収が低いほどこの差は大きくなり、控除のメリットが薄れていきます。

共通点2:他の控除が多く、税額がすでに圧縮されている

住宅ローン控除は、税額控除として最後に適用されます。その前に、扶養控除、配偶者控除、医療費控除、生命保険料控除などの所得控除が適用され、すでに税額が小さくなっていると、住宅ローン控除を引く余地がありません。

控除の知識と使い方の順番で解説している通り、「控除が多い=お得」とは限りません。複数の控除を組み合わせる場合は、全体のバランスを見る必要があります。

特に、ふるさと納税を積極的に活用している人は、所得税の納付額が既に減っているため、住宅ローン控除との相性に注意が必要です。

共通点3:共働き・ペアローンでも税額が足りていない

よくある誤解が、「共働き+ペアローン=住宅ローン控除を2人分フルで使える」という考え方です。

実際には、夫も妻も、それぞれが十分な税金を納めている必要があります。この条件がそろわなければ、控除は余ります。

特に、片方が育休・時短勤務中だったり、片方に控除が集中している家庭では、ペアローンでも控除を使い切れないケースが多くなります。ペアローンを組む前に、それぞれの納税額をシミュレーションすることが不可欠です。

共通点4:入居後に働き方が変わっている

住宅購入時は共働きフルタイムで収入も安定していたとしても、入居後に状況が変わることは珍しくありません。出産、育児、転職、体調不良など、ライフイベントによって収入が変動すれば、控除の恩恵も変わります。

住宅ローン控除は、将来の変化を自動で考慮してくれる制度ではありません。結果として、「控除枠はあるのに使えない」という状態が生じます。

共通点5:控除額の計算をしたことがない

意外に多いのが、そもそも自分の控除額と納税額を把握していないパターンです。「毎年年末調整で処理しているから大丈夫」と思い込んでいても、実際に数字を確認したことがない人は、控除を使い切れているかどうかすら分かりません。

源泉徴収票に記載されている所得税額と、住宅ローン控除の計算明細書を突き合わせれば、使い切れているかどうかは簡単に確認できます。年末調整と確定申告の違いを理解した上で、一度は自分の数字を確認してみてください。

控除を使い切れない場合の対策

住宅ローン控除を使い切れないと分かった場合、以下の対策を検討してください:

  • ふるさと納税の金額を調整する:住宅ローン控除との兼ね合いで、ふるさと納税の限度額が変わります
  • iDeCoの拠出額を見直す:所得控除で税額が減りすぎている場合、拠出額の調整を検討
  • 繰上げ返済を検討する:控除を使い切れないなら、余剰資金で繰上げ返済をして利息を削減する方が得になることも
  • 投資に回す:控除で浮いた分を新NISAなどの非課税投資に充てるのも FP的な最適解です

住宅ローン控除は「使い切れない」ことも想定内にする

重要なのは、住宅ローン控除を「使い切れないこともある」と想定した上で、住宅購入の判断をすることです。控除額を満額で計算して「これだけ得する」と見積もってしまうと、実際の恩恵が小さかった時にギャップが生じます。

なお、住宅ローン控除は繰越制度がありません。使い切れなかった分は、翌年に持ち越すことはできず、そのまま消滅します。産休・育休中は控除余りが生じやすい期間ですが、その分を取り戻す方法はないのです。

税金の基本的な仕組みを理解し、自分の納税額と控除額のバランスを把握した上で、住宅ローンの返済計画を立ててください。

参考として、住宅ローン控除・節税対策に関する書籍も出版されています。より詳しく学びたい方は参考にしてください。